どうか、笑っていて。

高校2年の夏に出会った同い年の男の子に私は恋をして、
お付き合いをすることにはなったけれど、
私が彼を想うほど彼は私のことを想ってはいなかったので、冬には
「友達に戻ろう。」と言われてしまいました。
その夜は、お布団の中でいっぱい泣きました。
そして、それから少しして彼が(結果的には彼女というわけではなかったのだけど)他の女の子と一緒に映画に行ったのを知り、
またその夜に、お布団の中でいっぱい泣きました。
私はほんとうに彼を失ったんだな、と思い知らされ、
心の半分以上をもぎとられるような、そんな痛みを経験したのでした。
多分、人生で初めて感じた「喪失感」というものだったのでしょう。
そんなふうに、心が離れるというだけでも「あの人を失った」という感覚は強烈で、ほんとうに胸が痛くて仕方がないのに、
突然彼氏が死んでしまったら、どれほどの気持ちなんだろう……と、泣いている友人を見つめるしかなかった大学生の時の私がいました。
私にとっても友人だった彼。
悔しくて仕方がありませんでした。
私にできたことは、お通夜の日に彼女の下宿先に泊まって一緒にいることだけでした。
他にも、高校生の時のその彼氏を紹介してくれた当時大学生だった友人も、出会って2年もしないうちに交通事故で突然逝ってしまいました。
お葬式では、私と同い年の彼の弟が、友人みんなの目の前でしたが、少し言葉を交わしているうちにどうしようもなくなったんでしょうね。
仲良しだった私にぎゅっと抱きついてきて身体を震わせて泣いてしました。
私には、彼をやさしく抱きしめることしかできませんでした。
突然、愛する人が死んでしまうということは、どれほどの痛みなんだろう…と、そんな友人たちを見つめながら思ったのを覚えています。
私は、叔母も父も祖母も病気で死んでいますから、「もうダメなんだ…。」という覚悟を持つことができました。
父の場合は、それはほんの数時間のことではありましたが、
だんだんと身体が死んでいくところに一晩寄り添っていられたので、
目の前で死を宣告されても、取り乱したりはしませんでした。
お医者さんの「ご臨終です。」という言葉を聞いてすぐに、私はそっと病室の窓を開けたくらいです。
お父さんの魂が早く行くべきところに行けるように、と。
叔母を失った時よりも、祖母を失った時よりも、父を失った時の喪失感の方がそれは比較にならないくらい大きいものでした。
どれだけ私は父を愛していたかを、その大きさで思い知らされました。
だからこそ、目の前でだんだんと死んでいくような死に方をしてくれて、ほんとうに感謝しました。
これが、突然失うような、そんな別れだったら耐えられないだろうな、と思いました。
事故などで、誰か恨むことができる相手がいたら、恨まずにはいられないだろうと思いました。
ですから、当時4歳で、まだ自分の名前も言えず信号も理解できず車が危ないものだという認識も持てていなかった息子がちょっとした隙から突然家から脱走していなくなった時は、冷静になろうとしてもなれませんでした。
どこを探してもいなくて、あの子をこのまま永遠に失うのではないかという考えが頭をよぎる度に吐きそうになりました。
あの小一時間ほどのことは、今でも軽く私のトラウマになっていて、出先で息子の姿をほんのちょっとでも見失うと必要以上に焦ってしまいます。
今世では、おかげさまで目の前で突然大切な人を失うという経験はしていません。
でも、タミエルが大切な「あの子」を目の前で突然失った時の気持ちを、少しくらいは想像できます。
そして、その絶望的な喪失感からくる生々しい感情の一部を感じたことにより、今世の私の「愛」がほんの少しでも深まったとしたら、
それも魂の癒しにつながるのかもしれない、と思いたいです。
もしも、タミエルの愛しい「あの子」が、今どこかの誰かとして生きているのだとしたら、
どうか笑っていて欲しいと、心から願っています。
そして、目の前で親友のタミエルを失った彼が、もしも今どこかの誰かとして生きているのだとしたら、
どうかその魂の傷が少しでも癒されていて、あの素敵な笑顔で愛する人たちと一緒にいますように、と心から願っています。

“どうか、笑っていて。” への2件の返信

  1. 死の話題だけは、これだけスピ系の話を見聞きしていても、(魂の不滅説とか自己演出説など)
    やっぱり、感情だけは納得できない部分が多いですよね。。
    私は、でも逆でしたよ。
    いっそ、交通事故で、一瞬で亡くなってくれれば、と何度も思いました。
    そうすれば、長い間苦しまないですんだだろうから。
    痛みと苦しみと、そして絶望と孤独を
    たったひとりだけ感じながら、それでも死という言葉を口にすることはできなくて。
    人にそれを話せば、恐怖が現実になるかもしれないし、周りは悲しませるから。
    そんな恐れる、不安だらけの死へ旅立つ人の気持ちを察したら、
    残される側の気持ちなんて、なんてことないわ、って思ったものです。
    せめて、それは怖いことじゃないのだと。
    あの時に知っていれば、話してあげられたのに。
    その時は知らなかったから。。何も話せなかったんです。
    だから、それだけがいつも心残りで。。。
    でも、きっと次に役立ちますね。この思いはきっと。
    結局、そうした大切な人の死を身近に経験したからこそ、
    私は今のように、見えない世界を探求し始めたのですものね。
    早くに失わなければ、ずっと興味さえもたなかったのに違いないんです。
    まったく、手の込んだ演出です。笑
    旅立った側は、今頃ニコニコして、
    「さぁ、次はアナタの迫真の演技を見せて!」と
    笑って見ているのかな。

  2. > でも、きっと次に役立ちますね。この思いはきっと。
    その経験自体が貴女を深い人にしてくれているでしょうし、絶対に無駄にはなりませんよね。
    > まったく、手の込んだ演出です。笑
    ほんとにそう思いますわー。
    > 旅立った側は、今頃ニコニコして、
    > 「さぁ、次はアナタの迫真の演技を見せて!」と
    > 笑って見ているのかな。
    名女優になって、名演技をしようじゃありませんか!

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